個展開催中ー作品追加しました
先週末から個展が始まり、そろそろ会期後半に入ります。
作品は初日に完売しましたが、毎日たくさんの方が見に来てくださり、歓声をあがるのを聞いたり直接お話ししたりして、在廊ならではの楽しい時間を過ごしています。
24日金曜日の夕方に作品を1点追加しました。
これからまた2点ほど追加する予定ですが、完成次第ご披露、販売はまとめて4月8日(土)に初日と同じ抽選方式で行う予定です。
追加したのはベンガル(という豹のような模様の種類)のノアちゃん。名前がついている作品にはすべてモデルがいます。
今回、奥のスペースはライブをしていただく山田稔明さんの家の庭と猫たちをモチーフに、SNSに登場するご近所の猫たちを作った「東京某所の猫町」エリアとなっています。
ノアちゃんはお隣さんです。
猫を通じて地域の人がゆるくつながっていくさま、そしてそのつながりや季節の移り変わりをSNSでリアルタイムにおすそ分けしてもらえるのが楽しくて、町全体を大きくイメージして作りました。
山田家の庭のできごとは山田さんの小説「猫と五つ目の季節」にまとめられています。そしてその後のストーリーは4月に発売されるエッセイ集「猫町ラプソディ」に。
山田家の猫たちの作品「紫陽花の庭」について山田さんがエッセイを寄せてくださいました。
作品集がお手元にある方はぜひそのページと合わせて読んでいただけるとうれしいです。
紫陽花の庭
初めて猫ラボさんに愛猫ポチを作ってもらったときの喜びを忘れない。ガラスの瞳は何か言いたげな顔で僕を見上げるポチの視線を思い出させたし、その身体の美しい曲線を僕は何度も指でなぞった。ヒゲも尻尾も、肉球の斑模様まで再現されたフェルトのポチのおかげで、僕の記憶のなかの彼女の姿も色褪せないままでいる。
ポチが天国へと旅立った後、季節の移ろいとともに綺羅星のごとくうちの小さな庭に現れたのがポチ実だ。ポチと瓜二つの三毛の仔猫は、一週間の駆け引きの果てに僕の家族になった。ポチ実を追うようにやってきたのは彼女の母親猫チミママで、我が家の庭はずっと賑やかだ。この庭の象徴は紫陽花だ。雨が降って花が咲いて、夏を経て立ち枯れて、また新しい芽吹きが始まって春になる。
猫ラボさんが我が家の庭をモチーフに作ったポチとポチ実とチミママの姿を目の当たりにして、また僕は「わあ!」と言葉にならない感嘆を漏らすことになったのだけど、猫ラボさんは優れたものつくりの人であると同時に熱心な観察者なのだなあということを再確認した。フェルトで精巧に作られた紫陽花を眺めながら、なんとなくその花言葉を調べてみて驚いた。<家族の結びつき>だなんて、神様だか誰だかが綴った魔法のシナリオみたいだ。物語は今も続いている。
山田稔明